2025年11月26日、全国のアスパラガス生産者が一堂に会した「アスパラガスサミット2025」。 会場が熱気に包まれる中、このイベントをスポンサーとして力強く支援していただいたのがAMO環境デザイン株式会社です。
近年の猛暑による「高温障害」と、世界情勢に伴う「燃料費の高騰」。
これらは今、農家を苦しめる二大課題と言っても過言ではありません。遮光資材や換気扇だけではコントロールしきれない夏のハウス内温度。そして、冬場の加温にかかる莫大な経費が経営を圧迫しています。
この課題に対し、従来の「空気を温める・冷やす」という概念を根本から覆すソリューションを提案するのが、北海道札幌市に拠点を置くAMO環境デザイン株式会社です。
同社が開発した『AMOチューブ』は、ノーベル物理学賞素材である「グラフェン」を配合した特殊な熱伝導近赤外線輻射チューブであり、地温制御の常識を塗り替えつつあります。
なぜ、北海道の技術者たちは「パイプ」を「チューブ」に変えたのか。そして、なぜこの黒いチューブがエネルギーコストを最大17分の1にまで圧縮できるのか。
同社代表の大浅浩一氏と取締役の城野貴大氏に、開発の裏側にある執念と、アスパラガス栽培における具体的な勝算について、じっくりとお話を伺いました。
亡き先代の意志と、北海道農業の「冬」を変える挑戦
――まずは、AMO環境デザインという会社が生まれた経緯についてお聞かせください。令和3年設立と伺いましたが、その技術の歴史はもっと古いそうですね。
AMO環境デザイン株式会社(以下、AMO):
はい。会社としての設立は令和3年(2021年)ですが、技術のルーツは昭和50年(1975年)まで遡ります。もともと私たちは、太陽熱や輻射(ふくしゃ)暖房の研究を行う別の企業で技術開発に取り組んでいました。
私はその前身となる会社で、企画・開発・製造と一通りの業務に携わっていました。しかし、当時の代表取締役が88歳で亡くなり、会社の存続が危ぶまれる事態となりました。
長年蓄積してきた「熱」に関するノウハウを、ここで絶やしてはいけない。その強い思いから、私が製造と販売部門を独立させる形で、前代表者の遺志を継いで設立したのがAMO環境デザイン株式会社です。
――そこまでして残したかった技術の根底には、どのような想いがあったのでしょうか?
AMO:北海道特有の農業課題を解決したい、という執念です。
かつて北海道や東北地方では、冬場の暖房熱源として60℃以上の温水を作ることが技術的に困難でした。無理に温度を上げようとすれば燃料費がかさみ、結果としてパートさんを雇う人件費よりも暖房費の方が高くなってしまう。
そのため、農家さんは冬場の栽培を諦め、半年間は出稼ぎに行かざるを得ないという状況が長く続いていました。
「これではいけない。通年雇用ができる安定した農業経営を実現しなければならない」
そのためには、圧倒的に低コストで、かつ高効率な熱源システムが必要です。私たちは昭和の時代から改良を重ね、冬場のマイナス気温下でも高温のお湯を作れる技術を確立しました。札幌市交通局の車庫や官公庁への導入実績もありましたが、これを農業の現場に普及させ、通年雇用ができる環境を作ることこそが、私たちのミッションなのです。
「硬いパイプ」から「柔軟なチューブ」へ。現場を変えたグラフェン革命
――その課題解決の切り札となるのが、今回ご紹介いただく『AMOチューブ』ですね。開発のきっかけは何だったのですか?
AMO:実は、以前の製品は「チューブ」ではなく、全身が硬質のプラスチック製「パイプ」でした。
性能は良くても、これが普及の大きな足かせになっていました。10m巻きのホースの束が、軽自動車のタイヤぐらいの直径になり、それが50本、100本と積み上がる。在庫を保管するだけで体育館クラスの倉庫を2つ借りなければならず、輸送コストも莫大でした。
何より現場での施工が大変です。硬くて曲がらないため、接続には専用の工具が必要で、農家さんが自分で手軽に設置できる代物ではありませんでした。
――性能が良くても、使い勝手が悪ければ現場には広まりませんね。
AMO:そうです。そこで私たちは、「もっと扱いやすく、安価な素材で作れないか」と試行錯誤を繰り返しました。
目をつけたのが、安価な特殊樹脂とノーベル物理学賞を受賞した素材である「グラフェン(天然黒鉛の層を、原子1個分の厚さにした粉末)」です。
グラフェンは、炭素原子が六角形の網目状に結びついた、地球上で最も薄い(0.34ナノメートル)原子膜であり、ダイヤモンド並みの強度と、銅を凌ぐ極めて高い熱伝導性を持っています。
私たちは、世の中に広く普及している安価な特殊樹脂に、このグラフェンを均一に分散させて混ぜ合わせる特殊加工技術を研究しました。その結果、ふとしたきっかけで理想的な配合に成功したのです。


――その結果、現場での使い勝手はどう変わったのでしょうか?
AMO: 劇的に変わりました。最大の変化は、プロの業者でなくとも扱える「加工のしやすさ」です。 以前の硬く黒いパイプは、現場に合わせて曲げることも切ることも一苦労で、接続には専用の工具が不可欠でした。しかし、グラフェンを配合した今の黒いチューブは柔軟性があり、普通のハサミで簡単に切断できます。 1巻きの重量も片手で持ち運べるほど扱いやすくなりましたので、農家さんご自身が、畑の形状に合わせて自由にチューブを転がし、設置できるようになったのです。
「室温」は関係ない。ターゲットだけを「冷やす」メカニズム
――ここからは、アスパラガス農家が最も頭を悩ませる「高温対策」について伺います。AMOチューブは、どのようにして夏の暑さから作物を守るのでしょうか?
AMO:
まず、従来の冷房の概念を捨ててください。これまでの農業用冷房は、エアコンやミストを使って「ハウス内の空気全体」を冷やそうとしていました。しかし、広大なハウスの空気を冷やすには莫大なエネルギーが必要ですし、換気をすれば効果は逃げてしまいます。
私たちのアプローチは違います。「室温」を下げること自体が目的ではなく、「作物そのもの」や「地温」が適温になれば良いと考えています。
AMOチューブの最大の特徴は、グラフェン由来の「輻射(放射)機能」にあります。
チューブの中に冷たい水(地下水や川の水など)を通すと、熱力学の「熱は高い方から低い方へ移動する」という原理が働きます。チューブが冷熱源となり、周囲にある温かいもの(土壌や植物)が持っている熱エネルギーを、輻射によって急激に奪い取るのです。
――空気を介さずに、熱を直接移動させるということですか?
AMO:
その通りです。わかりやすい事例があります。
ある施設園芸のハウスで、地下水(水温19.8℃)をAMOチューブに通した実験を行いました。夏場のハウス内は非常に暑く、一番高いところでは室温が33.5℃に達していました。


しかし、AMOチューブを設置した直下の、お花の苗がある部分の温度を測定すると、23.8℃まで下がっていたのです(最終地下水までの戻りチューブ直下では戻の苗温度は26.2℃)。


――室温が33℃を超えているのに、株元は23℃台まで下がるとは驚きです。
AMO:ミストや換気扇では、ここまでピンポイントに温度を下げることは難しいでしょう。
AMOチューブは、チューブから半径2m以上の範囲まで熱(または冷熱)を放射します。チューブ自体が一定の温度で放射を続けることで、周囲の熱が引っ張られて移動し、対象物を急速に冷却する。これがグラフェン配合チューブによる冷却のメカニズムです。
アスパラガスの「根」を守る。土中埋設の可能性
――アスパラガス栽培において、地温のコントロールは収量や品質に直結する生命線です。AMOチューブは土の中に埋設することも可能でしょうか?
AMO:はい、可能です。現在は施工の手間を省くために、畝の上に直接置いたり、空中に吊り下げたりするケースも多いですが、地中への埋設も非常に効果的です。
AMOチューブの直径は32mmですが、そこから最小でも10cm、条件によっては30cm程度の範囲の土壌を360度全方位で冷却できることが実証されています。
――つまり、高畝の中にAMOチューブを通せば、地温を直接下げることができると。
AMO:間違いなく下がります。
実際に、酪農学園大学の園田教授との共同研究では、ハウスの新築時にAMOチューブを導入いただいており、土の表面から約30cmの深さにチューブを埋設しています。ここに冷水を通せば、作物の根域をダイレクトに冷やすことができます。
酪農学園大学の園田教授とのアスパラガス共同研究ハウス写真

――土の中に異物を入れることで、根の成長を阻害する心配はありませんか?
AMO:その懸念はありません。むしろ逆の効果が見られています。
このチューブから放射される波長は「近赤外線」であり、アスパラガスに限らず、様々な作物で根の成長を促進する効果を確認しています。根がチューブを避けるのではなく、チューブを伝って伸びていくような現象も見られますので、生育の邪魔をするどころか、プラスに働くと考えています。北海道美唄市のアスパラ農家における実験事例では、1年目の葉茎の量は約2倍になり、また2年目の収穫の際には収穫するアスパラガスの収穫時期が早くなっただけでなく、その大きなには関係者が全員大変驚きました。通常、15cm~20cmのアスパラガスの背丈が60~120cmまで巨大化したのです。

エネルギーコスト「17分の1」の実績。SDGsと経営の両立
――冷却効果もさることながら、昨今の燃料高騰に対するコスト削減効果も気になります。
AMO:そこが最も強調したい点です。
従来の温風暖房などで空間全体を温めたり冷やしたりする場合と比較して、AMOチューブシステムはエネルギーコストを劇的に削減できます。
私たちの経験値では、導入当初で8分の1から10分の1、最終的には17分の1までコストを削減できた実績があります。
これは、チューブの直径の中を通る水だけを温度管理し、必要な場所だけに熱を放射する効率の良さが生み出す数字です。
――17分の1というのは、経営へのインパクトが非常に大きいですね。
AMO:さらに、暖房利用時の性能についても触れておきます。
AMOチューブは、太陽光のエネルギー密度が高い短波長域を効率よく集熱できます。従来の集熱効率40%を71%まで向上させたことで、外気がマイナス20℃や30℃の極寒時でも、チューブ内の水を60℃から80℃の温水に変えることが可能です。
この高い熱効率と省エネ性能は、SDGsの観点からも重要です。
特に「目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「目標13:気候変動に具体的な対策を」などに寄与し、農林水産省が掲げる「農業に関する石油由来のCO2をゼロにする」という目標に対し、私たちの技術は現実的な解になり得ると自負しています。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
AMO:この技術は、農業分野だけでなく、工場、体育館、災害避難所、さらには電気自動車の室内暖房や宇宙船内など、熱管理が必要なあらゆる場所への応用が可能です。
しかし、まずは私たちの原点である「農業」において、生産者の皆様の苦労を減らしたい。
「燃料費が高くて冬場は作れない」という常識をなくし、夏は涼しく、冬は暖かく、一年を通じて安定した農業経営ができる環境を提供すること。それが、先代から受け継いだ私たちの使命であり、日本の農業を次世代につなぐための責任だと考えています。
AMOチューブシステムの導入メリットまとめ
今回のAMOチューブシステムは、単なる「暖房・冷房器具」ではなく、農業経営の構造を変えうるポテンシャルを秘めています。主なメリットを以下に整理しました。
圧倒的なコスト削減
空間全体ではなく、作物周辺のみを効率的に温度制御するため、エネルギーコストを従来の1/8〜1/17に削減可能。燃料高騰時代の強力な対抗策となります。
地下水活用による「冷却」
地下水などの冷熱源をチューブに通すことで、輻射熱移動により地温や株元温度を直接下げることが可能。室温に左右されない確実な高温対策が実現します。
施工の容易さ
グラフェン配合により、ハサミで切れ、自由に曲げられる柔軟性を実現。専用工具不要で、生産者自身が設置可能です。
根圏環境の改善
放射される近赤外線が根、茎、葉の成長を促進。土中埋設により、アスパラガスの根域を直接適温に保ちます。
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