2025年11月26日、全国のアスパラガス生産者が一堂に会した「アスパラガスサミット2025」。 会場が熱気に包まれる中、このイベントをスポンサーとして力強く支援していただいたのが住化農業資材株式会社です。
アスパラガス栽培において、収量と品質を決定づける最大の要素は何か。多くの生産者が口を揃えて言うのが「水管理」です。
特に夏場の最盛期、水を好むアスパラガスには大量の灌水が欠かせません。しかし、そのために生産者は、広大な圃場を走り回り、ポンプの能力に合わせて何十回ものバルブ開閉操作を繰り返しています。
「灌水にかかる時間を、もっと生産的な作業に使えないか」
この切実な現場の課題に対し、あえて最先端のデジタル技術ではなく、徹底した「アナログ」の思想で解決策を提示する企業があります。住友化学アグログループであり、長年アスパラガス農家に寄り添ってきた住化農業資材株式会社です。
同社が開発した灌水自動制御盤『よくばりタイマー』は、なぜ「データの蓄積」を捨て、「アナログ時計」を採用したのか。そして、なぜそれが現場で支持されているのか。
同社営業本部・東日本営業所所長の楠生(くすばえ)氏に、開発の裏側にある「オン・ザ・ファーム」の精神と、アスパラガス栽培における省力化の勝算について、じっくりとお話を伺いました。
「売る」だけではない。雨よけアスパラガス栽培と共に歩んだ30年
――まずは、住化農業資材という会社の立ち位置についてお聞かせください。住友化学グループということで、メーカーとしての側面が強いのでしょうか。
住化農業資材 楠生氏(以下、住化):
はい、会社概要としては住友化学アグログループであり、メーカーという立ち位置になります。
事業の柱は大きく分けて3つです。
1つ目が、今回お話しする「灌水資材事業」。スミサンスイシリーズ、ミストエースやスミホースといった灌水資材の製造販売を行っています。
2つ目が「種子コート事業」。種苗メーカー様からお預かりした種子を、播種しやすいようにコーティング加工する事業です。
そして3つ目が「種苗事業」。人参を主力に、レタス、ブロッコリー、花卉(トルコギキョウ、カスミソウ)などの育種・販売を手掛けています。
その他にも、肥料や培土の製造販売、ビルや公園の緑化灌水事業なども行っていますが、私たちのアスパラガス分野での関わりで言えば、やはり灌水資材がメインになります。
――アスパラガス農家の間では「スミホース」は代名詞的な存在です。
住化:
ありがとうございます。スミホースは1996年に販売を開始しましたので、もう30年近い歴史があります。
実は、販売開始当初、佐賀県のアスパラガス農家様にスミホースを最初に販売したのは私なんです。
――楠生さんご自身が、普及の第一歩に関わっていらっしゃったのですね。
住化:
そうです。私は立場上、メーカーの人間ですが、私たちのスタンスは一貫して「オン・ザ・ファーム」です。
通常、私たちの製品は商社や大手種苗メーカーを通じて地元の小売店に卸され、そこから農家さんの手に渡ります。農協やJAへの直接販売も行いませんし、農業分野での工事施工請負もいたしません。商流上は、現場から少し距離があるように見えるかもしれません。
しかし、だからこそ私たちは「現場」にこだわります。
私は今でも飛び込み訪問を行いますし、代理店や農協の方との同行営業を通じて、生産者の方々と直接繋がりを持つようにしています。
農協の軒先をお借りして、水道水に繋いで灌水チューブの実演を行うといった活動も地道に続けてきました。
――なぜそこまで現場にこだわるのでしょうか?
住化:
現場の「困りごと」を知らなければ、本当に現場で役に立つ製品は作れないからです。
実際に、弊社でヒットしている灌水資材は、すべて現場の生産者さんの声を拾い上げ、その問題を解決するために開発された商材です。畑の中での困りごとを把握し、研究室の中で開発され生まれたものです。それが私たちの強みであり、プライドでもあります。
「毎分2.3L」の衝撃と、手動操作の限界

――今回のテーマである「省力化」について伺います。アスパラガス栽培における灌水の課題とは、具体的にどのようなものでしょうか。
住化:
アスパラガスは非常に水を好む作物であり、特にスミホースのような資材を使う場合、その「水量」がポイントになります。
一般的な点滴チューブから出る水量は、1メートルあたり毎分0.1リットル程度です。これに対し、スミホースは毎分2.3リットル。つまり、23倍もの水が一気に出るわけです。
――23倍ですか。それは圧倒的な差ですね。
住化:
はい。この大水量は、短時間でしっかりと土壌を湿らせることができるという大きなメリットがあります。
しかし、その一方で「ポンプ能力の制約」という壁にぶつかります。一度に大量の水が出るため、広い圃場全体に一斉に水を撒こうとすると、一般的なポンプでは水量が足りなくなってしまうのです。
――つまり、エリアを細かく分けて水を撒く必要があると。
住化:
その通りです。例えば、ハウス全体を8つのブロックに分けたとします。スミホースで灌水する場合、1つのブロックへの灌水が終わったらバルブを閉め、次のブロックのバルブを開ける。これを8回繰り返さなければなりません。
しかも、アスパラガスは毎日、あるいは1日に複数回の灌水が必要になるケースもあります。生産者の方は、そのたびに時計を見ながらバルブまで走り、開閉操作を行わなければならない。
これは、物理的な労力もさることながら、精神的にも「灌水」という作業に縛り付けられることを意味します。
――そこで開発されたのが、灌水・施肥自動制御盤『よくばりタイマー』ですね。
住化:
はい。目的は完全に「省力化」です。
よくばりタイマーを使えば、設定した時間に合わせて、最大8ブロック(系統)ごとの灌水を自動的に切り替えて行います。
人がバルブの前に張り付いている必要はありません。機械が勝手にやってくれる。この「手離れ」こそが、生産者の方々が最も求めていたものでした。
あえて「アナログ」を選ぶ。ハイテク全盛期へのアンチテーゼ
――自動灌水システムというと、最近はスマホで操作できたり、クラウドにデータが蓄積されたりする高機能なものも増えています。しかし、『よくばりタイマー』は非常にシンプルな作りだと伺いました。
住化:
そこが最大の特徴であり、競合製品に対する優位性でもあります。
よくばりタイマーは、あえて「アナログな針時計(24時間タイマー)」を採用しています。
制御盤を見ていただければ分かりますが、円形の時計にピンを倒して時間を設定する、昔ながらのタイプです。
――なぜ、今の時代にアナログ時計なのでしょうか?
住化:
理由は大きく2つあります。
1つは「操作の分かりやすさ」です。
多機能なデジタル液晶画面は、操作を覚えるのが大変です。階層メニューを潜って設定を変更したり、トラブルが起きた時にエラーコードを確認したりするのは、高齢の生産者様にとっては大きなストレスになります。
その点、アナログ時計なら一目見れば現在の設定時刻が分かりますし、直感的に触れます。「シンプルイズベスト」。複雑な機能を望まず、誰でも簡単に扱えることを最優先にしました。
2つ目は「コストパフォーマンス」です。
よくばりタイマーには、灌水履歴などのデータを蓄積する機能はありません。基本的にコントロール(制御)のみを行う機器です。
「データが見られないのは不便ではないか?」と思われるかもしれませんが、データを蓄積・通信させる機能を省くことで、製品価格を劇的に安く抑えることができます。
――具体的にはどのくらいの価格差になるのでしょうか。
住化:
欲張りタイマーの定価は約15万円(税抜き)程度です。
複合環境制御のような高度なシステムを導入しようとすれば、桁が一つ変わることも珍しくありません。
私たちのお客様は、莫大な投資ができる大規模法人だけではありません。家族経営で頑張っている農家さんが、少ないイニシャルコストで確実に省力化を実現できる。そこを目指しました。
――データの蓄積よりも、まずは日々の作業を楽にすることを選んだわけですね。
住化:
そうです。それに、耐久性も抜群です。タイマー本体は適切に使えば10年以上確実に使用できます。
仮に10年使うとすれば、年間のコストはわずか1万5,000円程度。1ヶ月あたり千円ちょっとで、あの煩わしい灌水のバルブ操作から解放されるわけです。非常にコスパが良いと自負しています。
「空いた時間」が品質を作る。省力化のその先へ
――実際に導入された農家さんからは、どのような反響がありますか?
住化:
やはり、まず第一声としていただくのは「作業が楽になった」という言葉です。これが最も多く、そして私たちにとっても一番嬉しい言葉です。
しかし、メリットは単に「体が楽になる」だけではありません。
――とおっしゃいますと?
住化:
灌水作業に費やしていた時間を、他の重要な管理作業に充てることができるようになります。
例えば、アスパラガスやトマトなどの栽培では、葉かきや芽かきといった手作業が品質を大きく左右します。灌水バルブの番をしていた時間をこれらの作業に回すことで、結果的に「品質向上」や「収量アップ」に繋がるのです。
実際に福島県のトマト農家での試験結果では、自動灌水導入によって空いた時間を管理作業に充てたことで、収益性が向上したというデータも出ています。
――「よくばりタイマー」というユニークなネーミングには、どんな意味が込められているのですか?
住化:
基本機能はシンプルですが、生産者さんの要望に合わせて様々なオプション機能を「欲張りに」組み合わせることができる、という意味です。
例えば、「日射比例制御(日射コントローラー)」というオプションがあります。これは時間制御ではなく、設定した積算日射量に達すると自動で灌水を開始する機能です。
――天候に合わせて水やりを変えられるのですね。
住化:
はい。晴れて日射が強い日は回数を多く、逆に曇天や雨の日は灌水を自動でストップします。
その他にも、液肥混入器と連携させて「液肥施肥」と「水」を自動で切り替える機能や、ある一定の時間から潅水を遮断するための「日射遮断タイマー」など、現場のニーズに合わせてシステムを拡張できるのも強みです。
一生付き合う「水」だからこそ。導入の条件と哲学
――非常に魅力的なシステムですが、導入にあたっての条件や注意点はありますか?
住化:
導入の必須条件として、「電気で動くモーターポンプ」を使用していることが挙げられます。
川の水などを汲み上げているエンジンポンプ(ガソリン駆動)では、電気的な制御ができないため、よくばりタイマーは使用できません。ここだけはご注意いただきたい点です。
――故障などのトラブル対応も気になるところです。
住化:
アフターサポート体制は万全を期しています。
落雷などで基盤が故障した場合でも、ほぼ修理が可能です。修理のご依頼は代理店経由で弊社に上がってきますが、弊社には専門の修理部門があり、迅速に対応します。
また、修理期間中に灌水制御が止まってしまっては困りますので、その間は代替機をお貸し出しする体制も整えています。「売って終わり」には絶対にしません。
国内シェアNo.1の矜持と「サービスエンジニアリング」
――最後に、アスパラガス生産者に向けてメッセージをお願いします。
住化: アスパラガスの灌水資材に関しては、点滴チューブも含めておそらく弊社が国内ナンバーワンのシェアを頂いていると自負しています。 多くの現場を見てきた実績がありますので、生産者の皆様には「アスパラガスの灌水で困ったことがあれば、まずは住化の楠生に相談してほしい」とお伝えしたいですね。
――それは非常に心強いです。具体的にはどのような相談が可能なのでしょうか?
住化: 私たちには「サービスエンジニアリング」ができるという強みがあります。 例えば、私たちはポンプ自体を売っているわけではありません。しかし、お客様が使っているポンプの仕様を見せていただければ、「このポンプの能力なら、スミホースでこれだけの面積を一斉に灌水できますよ」「点滴チューブならこれくらいの面積までいけますよ」といった計算が、パパっと即座にできます。
――ポンプの能力と資材のスペックを掛け合わせて、最適な設計をその場で提案できると。
住化: はい。単にモノを売るだけでなく、そうした技術的なバックボーン(裏付け)を持っていることが、私たちの最大のセールスポイントです。 できれば弊社の製品について相談してほしいところですが(笑)、アスパラガスの灌水に関することであれば何でも相談に乗ります。その知見には自信がありますので、ぜひ頼ってください。
よくばりタイマー導入メリットまとめ
今回のインタビューで見えてきた『よくばりタイマー』の真価は、高機能化が進む農業資材トレンドへの「逆張り」とも言える、徹底した現場最適化でした。主なメリットを以下に整理します。
確実な省力化と収量への還元
大水量灌水(スミホース等)における頻繁なバルブ操作を完全自動化。
創出された時間を葉かき・目かき等の他の管理作業に充てることで、作物の品質・収量向上に寄与。
現場ファーストな操作性とコスト
「アナログ針時計」の採用により、誰でも直感的に設定・確認が可能。
データ蓄積機能を省くことで、約15万円(税抜き)という低価格を実現。
高耐久設計で、ランニングコストも極小。
柔軟な拡張性
日射比例制御、流量制御、液肥混入器連携、時間帯強制停止など、栽培環境に合わせた「欲張り」な機能追加が可能。
盤石な技術サポート(サービスエンジニアリング)
ポンプ能力に基づいた正確な灌水設計の提案が可能。
アスパラガス灌水No.1シェアの知見による包括的な相談体制。
「生産者さんの作業を一番に楽にしてあげたい。」 楠生氏のその言葉には、30年間現場を走り回ってきた者だけが持つ重みがありました。 複雑なIT機器は必要ない。ただ、確実に水をやり、確実に楽になりたい。そんなアスパラガス農家にとって、この質実剛健なシステムと、それを支える住化農業資材の技術力は、最強のパートナーになるはずです。
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