スマート農業の主役たち:国内外アグリテック企業と多様な作物の未来

  • URLをコピーしました!
目次

1. はじめに:農業の課題とスマート農業の可能性

日本の基幹的農業従事者は、2000年の240万人から2024年には111万4千人まで減少しました。
年齢構成は65歳以上が71.7%、うち70歳以上が60.9%、平均年齢は69.2歳で、高齢化が一段と進んでいます。

こうした構造変化を受け、政府は2024年に「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」(令和六年法律第六十三号)を制定し、6月14日成立、6月21日公布、10月1日施行としました。農林水産省e-Gov 法令検索
同法は、産地・事業者が作成する「生産方式革新実施計画」「開発供給実施計画」の認定制度を設け、認定を受けた主体に対して金融・税制等の支援措置を講じることで、AI・ロボット・IoT等のスマート農業技術の現場実装を加速させる枠組みです。 (出典:農業労働力に関する統計:農林水産省


2. 国内のアグリテック企業:多様な技術と取り組み

大手企業の技術展開

ヤンマーホールディングス株式会社
自動運転農機やセンシング技術を活用し、水稲や大規模穀物作の省力化を推進。スマートビレッジ構想の一環として、スマート農機や環境データを活用した効率的な農業の実現に取り組んでいます。

(出典:ヤンマー

クボタ株式会社
自動運転トラクターや農業用IoTセンサーなど、環境モニタリングから圃場管理までをトータルに支援するソリューションを展開。施設園芸向けの環境制御装置も提供しています。

(出典:クボタ アグリソリューション

NEC・NTTデータ・パナソニックHDなど
IT技術を活用し、営農支援クラウド、リモートセンシング、画像解析AIなどを展開。中小規模農家でも導入しやすいサービス設計を行っています。


スタートアップ・ベンチャー企業

inaho株式会社
AIを活用した自動収穫ロボットの開発を行っています。現在はトマト収穫機を日本で開発しオランダで実用導入を進めており、現場の負担軽減と収穫精度向上を目指しています。※本プロジェクトは「農林水産省SBIR制度」により実施された補助事業の成果の一部です。
(出典:inaho株式会社 テクノロジーで農業を持続可能に)

株式会社オプティム
圃場の画像解析を基にした病害虫検出や生育診断AIを提供。営農支援クラウド「Agri Field Manager」で圃場管理を効率化しています。
(出典:オプティム 農業事業

株式会社AGRI SMILE、株式会社セラク
施設園芸分野を中心に、環境センサーや自動灌水装置を活用した栽培環境の最適化を支援。クラウド型の管理ソリューションも提供しています。


3. 海外のアグリテック企業:先端技術とグローバルな展開

Plenty(米国)
垂直農法(Vertical Farming)を採用した屋内植物工場の先進企業。レタスやハーブなどの葉物野菜をAIと環境制御技術により安定的に生産しています。アスパラガスや果菜類への対応は公式に明示されていません。
(出典:Plenty公式サイト

Priva(オランダ)
温室向けの環境制御・灌水・施肥の自動化システムを提供。トマト、パプリカ、キュウリなど施設園芸で広く使用され、世界中に展開しています。アスパラガスへの特化情報は確認できません。
(出典:Priva公式サイト

RootWave(イギリス)
AIと電気制御技術を用いた「電気除草ロボット」を開発。薬剤を使用せず、雑草のみを選択的に除去する持続可能な農業ソリューションとして注目されています。
(出典:RootWave – 雑草をザップする |化学物質ゼロ

FarmLogs(米国)
衛星画像・気象・土壌データを統合した農業経営支援クラウドを提供。作付け計画や収穫予測、資源管理に活用されています。主に北米での中小規模農家に広く導入されています。
(出典:FarmLogs公式サイト


4. 多様な作物への適用と技術動向

スマート農業は作物の特性に応じた技術選定が求められます。以下は代表的な適用例です。

  • トマト・パプリカ:環境制御システム(例:温湿度・CO₂調整)や栽培支援AIが導入され、収量や品質の安定化に貢献しています。
  • イチゴ:AI画像解析による収穫タイミングの自動判定、ロボットによる収穫実証が進行中です。
    (出典:JAcom「ロボつみ」実証記事)
  • アスパラガス:国内ではinahoが収穫ロボットの実証を進めており、施設園芸での環境制御導入も模索されています。
  • レタス・葉物野菜:自動播種・収穫・照明制御による植物工場型の都市近郊生産が拡大しています。

(出典:農林水産省「スマート農業技術カタログ」および各社公式情報)


5. 今後の展望と普及促進策

農林水産省は、スマート農業導入に向けて、技術実証事業や機械導入支援の補助制度を展開中です。

導入事例や補助情報は以下から確認できます:
スマート農業技術カタログ(施設園芸):農林水産省

現場レベルでは、導入コストや技術習熟の課題も残るため、自治体や生産法人による段階的な導入と効果検証が成功の鍵となります。


6. まとめ

国内外のアグリテック企業は、スマート農業の導入によって日本農業が直面する人手不足や生産性の課題解決に貢献しています。
国内では水田・施設園芸・果菜類を中心に技術の導入が進み、海外では垂直農法や環境制御、自動化システムが進化を続けています。
トマト、イチゴ、レタス、アスパラガスなど、作物ごとの特性に応じたスマート農業技術の普及が進んでおり、今後も現場との連携による実用化が期待されます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次