誰でも使える「現場」の正解|株式会社丸昇農材|企業インタビュー

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2025年11月26日、全国のアスパラガス生産者が一堂に会した「アスパラガスサミット2025」。

会場が熱気に包まれる中、このイベントをスポンサーとして力強く支援していただいたのが株式会社丸昇農材様です。

近年、農業界では「スマート農業」や「自動化」が叫ばれていますが、同社はその基本となる「水(灌水)」に関するインフラにおいて、独自の技術と哲学で生産者を支え続けています。

なぜ、地方の一企業が開発した灌水制御システム『アクアマイスター』は、発売から10年経った今もなお、多くの農業生産者から選ばれ続けているのか。

そして、同社が想う「補助金に頼らない、自立した農業経営」とはどのようなものか。

サミットでの手応えや、製品開発の裏側にある「現場第一主義」の想い、そして未来の農業への提言について、代表取締役の横山社長にじっくりとお話を伺いました。

目次

サミットで見えた「課題」

――まずは、今回アスパラガスサミットに参加された率直な感想をお聞かせください。

株式会社丸昇農材 代表取締役社長 横山氏(以下、横山):

当日は全国からアスパラガス生産者の皆様が集まり、会場には素晴らしい熱気がありました。 登壇者の吉村様が「アスパラ甲子園」という言葉を使われていましたが、まさにその通りで、それぞれの生産者さんがプライドを持って切磋琢磨している様子が見受けられ、非常に良い会だったと感じています。

一方で、課題も見えてきました。 今回のサミットは、生産から流通まで非常に多岐にわたるテーマを扱っていました。そのため、どうしてもコンセプトが少し分散してしまった印象も受けました。 参加者の皆様とお話しする中で感じたのは、「もっと絞り込んだ、深い話がしたい」というニーズです。広く浅い情報だけでなく、それぞれの現場が抱える具体的な課題。例えば「設備投資」や「管理コスト」といったテーマについて、より突っ込んだ議論が必要だと感じました。

そうした意味でも、我々のような「設備」に特化した企業が、ブース出展などを通じて生産者さんと直接接点を持ち、より専門的な解決策を提案していく重要性を再認識する場となりました。

「設備屋」が挑む、農業課題の解決

――御社の事業概要について改めて教えてください

横山:

私たちの事業の核は、施設園芸(ビニールハウス)の設計・施工や、その内部設備の構築、特に「水(灌水)」に関わるシステムの提供です。

私たちが目指しているビジョンは、単にモノを売って終わりではなく、地域農業の「インフラの一部」になることです。

農業におけるインフラとは、電気やガスと同じように「あって当たり前、止まってはいけないもの」です。

例えば、設備のメンテナンスにおけるスピード感や、その土地の気候・風土に合わせた独自の提案力。これらが揃って初めて、生産者さんは日々の栽培に専念でき、新しいチャレンジが可能になります。

農業資材の世界には無数のアイテムが存在しますが、実際にそれらをどう組み合わせ、どう使いこなせばよいか悩まれている生産者さんは少なくありません。

お客様が「やりたい」と願うことを具体化し、次のステップへ進むための橋渡し役でありたい。それが私たちのスタンスです。

「プロダクトアウト」が生んだ『アクアマイスター』

アクアマイスター

――御社の主力製品である灌水制御盤『アクアマイスター』について伺います。開発から10年が経過しているとのことですが、開発当時の背景を教えてください。

横山:

『アクアマイスター』の開発に着手したのは約10年前になります。当時は高知県でも農業のハイテク化が進み始め、様々なメーカーから環境制御機器が登場していた時期でした。

世の中では「マーケットイン(市場のニーズに合わせて作る)」という手法が流行っていましたが、私は逆説的に「プロダクトアウト(作り手が本当に良いと思うものを作る)」という思想で開発しました。

――当時のトレンドとは異なった考えで、作りたかったものとは何だったのでしょうか?

横山:

当時の市場にあった製品に対して、私自身が現場で感じていた「違和感」を解消したかったのです。

当時、私も様々なシステムを自作したりしていたのですが、既存の製品は高機能であっても設定が複雑すぎたり、日本の多様な水源に対応できていなかったりと、現場のフィット感に欠ける部分がありました。

「もっと直感的に使えて、長く使えるものが必要だ」。そう感じ、生産者の方の成長とともにほしい機能をアレンジしてもらいたい。そういう思いを詰め込んだのが『アクアマイスター』です。

そこで特に私がこだわったのは「汎用性」です。

日本の農業現場における「水」の事情は、地域によって千差万別です。きれいに整備された井戸水がある場所もあれば、泥混じりの川の水を使わざるを得ない場所、水圧が極端に低い場所、あるいは排水環境が悪い場所もあります。

『アクアマイスター』は、そうした厳しい条件下でも設計ができるよう設計されています。

土耕栽培から養液栽培への切り替えや、1台での複数区画管理など、導入する圃場を選ばずにシステムを構築できる。この「汎用性の高さ」が、結果として多くの生産者さんの課題解決に繋がっているのだと思います。

トラブル時の「空白時間」を生まない

――機能面だけでなく、メンテナンス性にも強いこだわりがあるそうですね。

横山:

はい。生産者さんにとって潅水の最大のリスクは「水がかからない」ことです。作物は生き物ですから、特に夏場などは数時間の停止が致命的な損害に直結します。

よくお聞きするのが、「故障したら専門技術者が来るまで直せない」「どこが壊れているかわからない」「専用の部品が必要で、取り寄せに時間がかかる」というケースです。これでは、地方の生産者さんは安心して使えません。

そこで私は、『アクアマイスター』を開発する際、潅水システムの中でどこに不具合があるか素早く確認できるようにしました。

これにより、その場で素早く原因を特定し、すぐに直すことができるのです。

開発当時、県外の生産者さんとお話しした際、意外にも簡単な修理対応ができないケースが多いことに驚きました。だからこそ、「誰でも直せる」「ダウンタイムを最小限にする」という設計思想は、日本の農業現場において非常に重要な価値だと確信しています。

また、ご利用いただける販売店さんにとってもメリットが出やすくなります。私たちのような販売店の強みは、お客様との信頼関係。生産者さんの困りごとに対して素早く対応できればWin-Winな関係が構築できます。

「補助金ありき」からの脱却を目指して

――製品開発だけでなく、横山社長は「農業経営」のあり方についても、独自の哲学をお持ちだと伺いました。

横山:

私個人の意見ではありますが、農業は「なりわい(生業)」として自立していってもらいたいという願いです。

農業は農業生産を行うという産業ですので、投じた資金に対してしっかりとリターンを得て、利益を生み出す。産業として当たり前の姿を目指してもらいたい。

近年、農業界では手厚い補助金制度が整っています。補助金はあくまで投資のスピードを上げたり、回収を早めたりするための「手段」ではないでしょうか。補助金を取ること自体が「目的」になってはいけないと思います。

理想論ではあると承知していますが、「補助金が出るからやる」「補助金がないと成立しない」ということではなく、少しでも黒字になる計画を立ててもらいたいと考えています。

私は時々、生産者の方に「会計や経営を学んだ方がいいよ」とお伝えすることがあります。

良い作物を作ることは大前提ですが、それを通じて利益を出し、家族を養い、地域を守る。それが仕事の本質だからです。

「過剰投資」のリスクと向き合う

――具体的に、生産者の方々へどのようなアドバイスをされているのでしょうか?

横山:

特に新規就農の方に見受けられるのが、最初から過剰なスペックの設備投資をしてしまうケースです。

「最新の設備を入れたい」という気持ちは分かりますが、それが本当に経営規模に見合っているのか、コストパフォーマンスはどうなのか、冷静に判断する必要があります。

例えば、私たちが見積もりをする際にも、「本当にこれだけのスペックが必要ですか?」「まずはここから始めて、軌道に乗ったら拡張しませんか?」といった提案をさせていただくことがあります。

経営的なリスクが大きくなりすぎて、万一の時にキャッシュフローが回らなくなっては元も子もありません。

リスクを正しく理解し、しんどい時期があっても確実にお金が残るような経営をしてほしい。

私たちは設備屋ですが、生産者さんが成長しつづけていただくための「適正な投資」を一緒に考えたいと思っています。それが結果として、私たちも長くお付き合いできるパートナーシップに繋がるからです。

未来への展望

――最後に、今後の展望と全国の生産者さんへのメッセージをお願いします。

横山:

農業は、人々の「食」を支える、大義ある産業です。

私たち丸昇農材も、その産業を「インフラ」という側面から支える一員であることに、誇りを持っています。

今、農業を取り巻く環境は決して楽ではありません。資材高騰、気候変動、人手不足など、向かい風は強く吹いています。

しかし、だからこそ「農業経営」の知識を蓄え、新しい技術や設備を賢く使いこなすことで、乗り越えられる壁もあるはずです。

日本の農業、そして未来の子供たちの食を守るために、生産者の皆様と共に歩み、共に成長できるパートナーであり続けたいと思います。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


【お問い合わせ・資料ダウンロード】

株式会社丸昇農材

『アクアマイスター』の詳細・導入事例はこちら

http://marusyo-n.co.jp/

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