「強靭化」から「適応」へ。|東都興業株式会社|企業インタビュー

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2025年11月26日、全国のアスパラガス生産者が一堂に会した「アスパラガスサミット2025」。

会場が熱気に包まれる中、このイベントをスポンサーとして力強く支援していただいたのが東都興業株式会社様です。

農業関係者であれば、同社の名前を知らない方はいないでしょう。1963年の創業以来、日本の施設園芸を支え続け、特にパイプハウス用フィルム止め材の代名詞ともなった『ビニペット』は、高い市場シェアを誇る圧倒的なトップブランドです。

しかし、そんな「業界の巨人」がいま、大きなパラダイムシフトの最中にあります。

かつて競い合った「厳しい環境に耐える強靭なハウス作り」から、猛暑や気候変動に「柔軟に適応する環境作り」へ。そして、スマート農業が叫ばれる現代において見直される「ハードウェアの重要性」へ。

なぜ今、創業60年を超える老舗メーカーが「ハードウェアの適正化」を強く訴えるのか。サミットでの手応えや、生産者が直面する「見えない課題」への解決策、そして次世代の農業経営におけるハードの役割について、同社の勝田氏にじっくりとお話を伺いました。

目次

サミットで見えた「サプライチェーンの対話」

――まずは、今回アスパラガスサミットに参加された率直な感想をお聞かせください。ブースの様子はいかがでしたか?

東都興業株式会社 勝田氏(以下、勝田):

当日は非常に多くの熱意ある生産者様に来場いただき、大変有意義な時間でした。

特に印象的だったのは、ブースでの「リアルな反応」です。我々が展示した遮光資材『ヒロシェード』や換気システムをご覧になった生産者様が、その場でカタログを手に取り、「あ、これいいね」「うちのハウスならどう付けられる?」と、具体的な導入の話に発展する場面が多々ありました。

また、今回は生産現場の方々だけでなく、流通や消費に近いプレイヤーの方々も参加されていました。ここが非常に重要だったと感じています。

普段、我々のような資材メーカーは生産現場に近い位置にいますが、一方でスーパーやバイヤーといった流通側の方々も、「こういう農産物が欲しい」「こういう供給が必要だ」というニーズを持っています。しかし、その声が直接生産者に届く機会は意外と少ないのです。

今回のように、川上(生産)から川下(流通・消費)まで、それぞれの立場のプレイヤーが一堂に会し、情報が行き交う場ができたことは、業界全体にとって非常に大きな価値があったと確信しています。

「鉄の商社」から「農業のインフラ」へ

――改めて、東都興業様の歴史と、農業分野での立ち位置についてお聞かせください。

勝田:

弊社は1963年創業で、今年で62年目を迎える老舗メーカーです。

もともとは電柱の鉄筋などを扱う鉄鋼商社としてスタートしましたが、1960年代後半、創業者の代に農業分野へ参入しました。当時は、ハウスのフィルムを固定するために「竹」や「木の板」が使われていた時代です。そこに我々が、スプリングの弾性を利用してフィルムを確実に固定する『ビニペット』を開発・投入しました。

当時は自由貿易協定や関税の問題など政治的な背景もあり、国として施設園芸の面積を広げていく流れがありました。その波に乗り、『ビニペット』は爆発的に普及しました。今では「バンドエイド」や「サランラップ」のように、他社製品であってもフィルム止め材のことを「ビニペット」と呼んでいただけるほど、業界の標準語として定着しています。

現在では、パイプハウスの「骨組み(パイプ)」と「フィルム」以外の製品、例えばドア、換気装置、巻き上げ機などは、ほぼ全て弊社でラインナップを揃えられる体制になっています。

「過剰な保険」を見直す勇気

――長年業界を見てこられた中で、近年の製品開発においてどのような意識の変化があったのでしょうか?

勝田:

大きな転換点がありました。かつての製品開発の主眼は、当時多発していた台風などの災害に対する「強靭化」が主流で、

「いかに強いハウスを作るか」に注力し、高張力管を使った骨材の普及に合わせ、補強部材などを提案していました。もちろん、倒壊しないハウスを作ることは安定した生産基盤を整えるという意味でとても重要です。しかし、強くすればするほどコストが上がってしまうのもまた事実です。

ふと立ち止まって考えた時、これは生産者様にとって「いつ来るかわからない災害のための、高額すぎる保険」になってしまってはいないか、という葛藤が生まれました。

ハードを強くして償却費が高くなるということは、それだけ経営を圧迫することになるというジレンマです。どれだけ頑丈なハウスを作っても、それ単体では生産者様の実入り(利益)を増やすことには直結しないのです。

そこで現在は、自然災害に真正面から「抗う」のではなく、気候変動や猛暑に「順応する・適応する」という考え方に大きく舵を切りました。

特に近年は高温障害が深刻です。いかに環境に合わせて温度や湿度をコントロールし、作物が育ちやすい環境を作ってあげるかに投資の優先順位は変わっています。それが結果として、収量を守り、利益を確保することにつながるからです。

農家の利益を守る「3つの視点」

――具体的に、今回展示された『タンテンソー』などの換気システムを導入することで、生産者にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

勝田:

生産者の方々の声や、大学等との共同研究によるシミュレーション結果を整理すると、単なる「涼しくする」以上の価値が見えてきます。我々が提案する解決策は、大きく3つの視点に集約されます。

1. 「煙突効果」によるガス交換の促進が、作物を元気にする

我々が提案する天窓換気というと「温度を下げる」ことばかり注目されますが、実は「空気の流れ(気流)」と「ガス交換」を促進させるという非常に重要な側面があります。

サミットで公開したシミュレーションで明らかになったのが、特に縦方向の空気の流れの重要性です。『タンテンソー』のように屋根の頂上付近に開口部を作ると、温められた空気が上昇し、自然と外へ抜けていく「煙突効果」が生まれます。この時、サイド換気のみでは発生しにくい縦方向の気流が発生しやすいことが分かってきました。

アスパラガスのように背が高く繁茂する作物の場合、擬葉周辺や株元の空気が淀んでしまいがちですが、縦方向に空気を動かすことで、新鮮なCO2を取り込む効率的なガス交換を促すことができます。人間が肌で感じる涼しさだけでなく、「植物がどう感じているか」という視点で環境を整えることが、光合成を促進し、収量アップに直結すると考えています。

2. 「0.6%の作業」が招く「100%のリスク」を排除する

実は、換気の開け閉め作業そのものにかかる時間は、農作業全体のわずか0.6%程度だと言われています。一見すると微々たる時間です。

しかし、この数字には表れない「心理的・物理的拘束」が現場の負担になっています。「夕立が来たから急いで閉めに行かなければ」「風が強くなったから現場に戻ろう」といった、突発的な対応による作業の中断です。

収穫作業を1日休んでも大きな損失にはなりませんが、大雨の日に換気を閉め忘れたら、病気が蔓延して作物が全滅するリスクがあります。

自動化できるハードを導入することは、単に楽をするためではなく、こうした「突発的なリスク」を確実に回避し、生産者様の精神的な安定と目の前の作業に集中できる時間を守ることにつながります。

3. 「減らない」ことによる収益確保

農業の生産現場では「収量を増やす(プラス)」ことに目が向きがちで、ロスについては「一定量は仕方がない」と諦めてしまっている傾向があります。

しかし、例えば高温障害による「焼け」や、湿度過多による「病気」を防ぐ=マイナスを減らすことでも手元に残る利益は確実に増えます。

過剰な投資で利益を圧迫するのではなく、適正なハードで「減ってしまうものを減らす」。これが、最も確実で即効性のある「儲かる農業」への近道です。

製品特集:天窓で換気効率をUP!3種類の天窓の選び方

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なぜ東都興業が選ばれるのか

――ネット通販や海外製品もある中で、東都興業製品が選ばれる理由は何だとお考えですか?

勝田:

「日本の気候と経営規模に合った、適正なコスト感とカスタマイズ性」にあると自負しています。

海外の大規模なガラスハウスのような、環境を完全に制御するハイテクモデルも素晴らしいですが、日本の多くの生産者さんが利用するのはパイプハウスです。

パイプハウスの良さは、地域ごとの気候や作物の条件に合わせて柔軟にカスタマイズできる点にあります。

我々の設計思想の基本は、「特別な工具を使わずに施工できる」こと。

例えば『タンテンソー』は、既存のハウスに後付けが可能で、ホームセンターで買えるような一般的な工具があれば、農家さん自身の手で取り付けることができます。

発売から20年以上経ちますが、「風で飛んだ」という事故報告はほとんどありませんし、雪国での実績もあります。

高価なシステムを導入してコスト回収に苦しむのではなく、身の丈に合った投資で、確実に効果が出せる。この「手軽さ」と「確実性」のバランスこそが、長年日本の農家さんと向き合ってきた我々の強みです。

スマート農業時代における「ハード」の役割

――最後に、今後の展望があれば教えてください。

勝田:

これからの農業は、スマート農業による「データ化・見える化」が鍵になります。これまで勘と経験で行われてきたことが、数値として裏付けられるようになってきました。

しかし、ここで強調したいのは、「良いソフトには、良いハードが必要」だという真実です。

どんなに優れたデータ分析(ソフト)があっても、実際に環境をコントロールするための適正なハード(設備)がなければ、絵に描いた餅です。

センサーが「暑い」と検知しても、熱気を逃がすための天窓(ハード)がなければ温度は下がりません。

ここで言う「良いハード」とは、過剰なスペックの高級品ではありません。その土地、その作物に見合った、無理なく導入できる「適正なハード」です。

我々はこれからも、データに基づいた科学的な裏付けを持ちながら、生産者様が「確実に利益を出せる」ための、地に足の着いたハードウェアを提案し続けていきます。

「農業を魅力ある産業にする」。そのビジョンの実現に向けて、生産者の皆様と共に歩んでいきたいと考えています。


【企業情報】

東都興業株式会社

https://www.toto-vp.com

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