農業を始める際、最初に悩むのが「どんなビニールハウスを建てるべきか」。
一口に“農業用ハウス”といっても、構造・形状・価格・耐久性・補助金対象範囲は大きく異なります。
この記事では、農業用ハウスの種類・特徴・価格相場を徹底比較し、
さらに、アスパラガスの高畝(たかうね)栽培に対応する最新設計例と補助金制度まで詳しく解説します。
農業用ハウスとは?基本構造と役割
農業用ハウスとは、作物を天候・害虫・気温変化から守り、温度・湿度・光量を管理できる施設です。
野菜・果樹・花き・苗など、多様な作物に利用され、安定生産と高収益化の基盤になります。
構造は「骨材(フレーム)+被覆材(フィルム)」で構成され、
使う資材によって、価格・耐用年数・断熱性・補助金対象が変わります。
📘 出典:
農研機構『施設園芸構造設計指針』(2023)
全国農業資材連合会『施設資材価格調査』(2024)
🧱 構造(資材)による分類|価格と耐用年数の目安
農業用ハウスは、使う資材の種類(構造)でコストや耐久性が大きく変わります。
| 区分 | 構造・特徴 | 適した作物 | 概算コスト(10a) | 耐用年数 |
| パイプハウス | 軽量鋼管パイプ+ビニールフィルム。最も一般的で自作も容易。 | 葉菜類・イチゴ・アスパラガス | 約150〜300万円 | 約7〜10年 |
| 鉄骨ハウス | 溶融亜鉛メッキ鉄骨構造。耐風・耐雪性が高く長期利用に適する。 | トマト・イチゴ・果菜類 | 約400〜700万円 | 約15〜20年 |
| 高機能ハウス | 鉄骨+環境制御機器(温湿度・CO₂・潅水)を搭載。 | 高収益作物・実証栽培 | 約900〜1,500万円 | 約20年超 |
※概算コストについて:施工費は含まれておりません。
📘 出典:
農研機構『施設園芸構造設計指針』(2023)
全国農業資材連合会『施設資材価格調査』(2024)
🏠 形状(設計)による分類|作業性と気候適応の違い
同じ構造でも、ハウスの形状(設計タイプ)によって作業性や換気性能が変わります。
| 区分 | 形状・特徴 | メリット | 概算コスト(10a) |
| 単棟ハウス | 独立型の最も一般的な形状。規模拡張が容易。 | 小規模導入・段階的増設が可能 | 約150〜350万円 |
| 連棟ハウス | 複数棟を連結して内部を一体化。加温・換気効率が高い。 | 大規模栽培・冬期加温向き | 約600〜900万円 |
| 側高ハウス(高床型) | 側面高さを2.2〜2.5mに拡張。高畝作物にも対応。 | 換気性・作業性が向上し、高畝アスパラに最適 | 約350万円前後 |
| 簡易トンネル | 短期利用・苗生産用。軽量で設置が簡単。 | コスト最小・小面積対応 | 約30〜80万円 |
📘 出典:
全国農業資材連合会『施設資材価格調査』(2024)
長野県『高畝栽培マニュアル』(2023)
💰 農業用ビニールハウスの価格相場と変動要因
農業用ハウスの価格は、構造・資材・設備・地域条件によって変動します。
10aあたりの目安は以下のとおりです。
- パイプハウス:約150〜300万円
- 鉄骨ハウス:約400〜700万円
- 高機能ハウス:約900〜1,500万円
- 側高ハウス:約350万円前後
| 要因 | 内容 | コストへの影響 |
| フレーム構造 | パイプ式(軽量)か鉄骨式(重量)か | 強度が上がるほど高額 |
| 被覆資材 | POフィルム、農PO、硬質フィルムなど | 耐久性・透過率で価格差 |
| 連棟・単棟の違い | 連棟は施工費が高いが運用効率は高い | 約1.3〜1.5倍 |
| 設備機器 | 自動換気・環境制御・潅水設備 | +数十〜数百万円 |
| 地域条件 | 積雪・強風対策仕様(東北・北海道など) | 補強で+10〜20% |
💡 コストを抑えるポイント
- 小区画(5a〜)で段階的に導入する
- 高耐候・省エネ資材を選び補助金対象に
- 電源・潅水・通信設計を同時に行うことで後工事を削減
📘 出典:全国農業資材連合会『施設資材価格調査』(2024)
🌱 高畝アスパラ栽培に最適な「側高ハウス」設計例
アスパラガスの高畝(たかうね)栽培では、畝の高さが50〜60cmになるため、
一般的なパイプハウス(側高約1.7m)では作業空間が不足します。
そこで導入が進んでいるのが「側高ハウス(高床型)」です。

▶ 側高ハウスの特徴
- 側壁を2.2〜2.5mに拡張し、作業性・換気効率を向上
- 夏季の高温障害を軽減
- 高畝+潅水チューブ設置に対応
- POフィルム(二重被覆)+自動換気も可能
📊 導入事例(長野県野菜花き試験場)
・側高2.4m仕様の「枠板式高畝ハウス」で、夏芽期の地温安定と収量7%増を確認。
・POフィルム0.15mmを採用し、二重被覆+自動換気を併用。
📘 出典:長野県『高畝栽培マニュアル』(2023)
🧾 農業用ハウスに使える主な補助金制度
| 補助金名 | 概要 | 補助率 |
| スマート農業実装支援交付金 | ICT・環境制御機器を含むハウス導入を支援 | 1/2以内 |
| 強い農業づくり総合支援交付金 | 高耐候性ハウス・補修・更新などを対象 | 1/3以内 |
| 地域営農高度化事業 | 高畝・側高ハウス等、地域特化型施設に適用 | 1/3以内 |
| 県独自補助(例:長野県・香川県など) | 換気装置・省エネ資材導入を支援 | 最大1/2補助 |
📘 出典:農林水産省『スマート農業実装支援交付金』(2024年度)
💡 補助金活用のポイント
- 法人・組合・自治体連携体制があると採択率UP
- 着工後は対象外になるため、申請は施工前に必須
📝 注意書き(キャプション)
上記の補助金制度は参考情報です。
年度や地域、用途によって内容が変更される場合があります。
最新情報や申請方法の詳細は、inahoまたは各自治体・農政担当窓口にお問い合わせください。
⚙️ ハウス設計で見落とされがちなポイント:水・電源・通信
ハウス設計で意外と忘れられがちなのが、潅水・電源・通信設備の設計です。
後付けすると20〜50万円の追加費用が発生するケースもあります。
設計時に以下を確認しておきましょう。
- 潅水チューブやポンプの配置
- 貯水タンク・井戸の容量
- 自動制御機器の電源容量
- 通信インフラ(Wi-FiやIoTセンサーの設置場所)
🤝 inahoの「伴走型支援」でできること
inahoでは、ハウス導入前から“設計・資材選定・補助金申請・施工”を一貫してサポートします。
- 栽培目的・地域環境・資金計画に基づいたハウス提案
- 潅水・電源・通信インフラまでの総合設計
- 補助金申請や施工業者マッチングの支援
💬 「どんなハウスを建てるか」だけでなく、
「どう運用し、どう収益化するか」まで伴走するのがinahoの強みです。
📩 ご相談はこちら → inahoお問い合わせフォーム
(「ハウス設計について」とご記入いただくとスムーズです)
✅ まとめ
- 農業用ハウスは「構造 × 形状 × コスト」で選ぶ
- アスパラガスの高畝栽培には「側高ハウス」が最適
- 価格は10aあたり150〜1,500万円、補助金で最大1/2削減可能
- 潅水・電源・通信設計を同時に行うことで追加コスト防止
- inahoの伴走型支援で、設計〜補助金〜施工をトータルサポート
📚 参考文献
- 農研機構『施設園芸構造設計指針』(2023)
- 全国農業資材連合会『施設資材価格調査』(2024)
- 長野県『高畝栽培マニュアル』(2023)
- 農林水産省『スマート農業実装支援交付金』(2024年度)

